2014/06/20

トーマス・デマンドの空間探求 (下)


(承前)
ドイツ人以外の人にとっては、トーマス・デマンドの撮影した“現場”を見てなんらかの事件を想起するのは困難だ。しかし、そこに漂う異様な感じ、不可解な気配はある程度理解できる。

オフィス、ラボ、工場、キッチン、浴室――撮影された“現場”はほとんどが閉鎖空間で、そこから感じとれるものはまず違和感だ。それは奇妙な息苦しさといってもいいだろう。と同時に、作り物の“現場”は紙という素材からできているため、撮影画面にはどこか薄っぺらさが漂い、全体として嘘っぽさ、空虚感のようなものも拭えない。作品のなかに人間がいっさい登場しないこと、あるいは彩度の際立ったペキペキと折れてしまいそうな画像もそうした印象を与える要因となっている。

2014/06/08

トーマス・デマンドの虚と実 (上)


ドイツの写真が戦後の歴史と少なからず向きあってきたのはたしかだろう。それは批判とか自省というのとはどこか違って、確認という言葉に近いような気がする。壊れたパズルをもう一度きちんと枠のなかに嵌め込んでみる、というような。そうすることではじめて、過去が照射され、過去の側からも現代が逆照射される。確認という作業は、自分たちの生きる戦後社会について、そのリアリティを検証し続けることといってもいかもしれない。