2012/09/28

中平卓馬の伝説 2/2

(承前)
中平卓馬は編集者時代に、写真をとるか言葉をとるかで惑った。それにひとつの決着をつけたのがとう東松照明から贈られた黒いペンタックスだった。かといって中平の批評家あるいは詩人としての資質に疑うべきものはなく、それは写真においても充分に発揮されたといえる。

2012/09/20

中平卓馬の伝説 1/2


中平卓馬の写真論はなんとも刺激的で、その魅力は「なぜ、植物図鑑か」などにみられるラディカルな思想とともに、独特の文体にもよるところも大きい。そこからは70年代初頭の気配が強く漂ってくる一方で、そのラディカルさがかえってモダニズムにしっかりと足をつけている印象をあたえる。
一連の批評に比べると、中平の写真はつねに時代の先を走って、その速さには加速度がついてつねに半歩先、一歩先を駆けている。時代が追いついていかない。すでに伝説の写真家となっている中平が、その写真において正当に評価されるのはまだ先なのかもしれない。

2012/09/06

ベルト・テウニッセン、身体性 2/2

(承前)
ベルト・テウニッセンにはさらに、『Listen to your eyes』という写真集(2001)がある。精神障害者によるオーケストラを撮影したもので、音や楽器によって触発され、発見された悦びや驚きといった感情が、ひとりひとりの表情や仕草からあますところなく溢れ出ている。人間の心や感情と身体が一体となって、豊かな表情をみせているわけだが、これが表現できるのがいまや、精神障害者であるということに現代の病理があるのだろう。そう思えるほどに彼らが発散させているエネルギーが、多様で個性的でなにより開放的だ。

2012/09/01

ベルト・テウニッセン、失われたもの 1/2

家は風土に根ざしたもので、そこに住む人もまた当然ながら風土に深く関係している。ローカルであることで私たちはある歴史空間に属し、自身の存在証明を得ているということなのだろう。オランダの写真家ベルト・テウニッセン(Bert Teunissen, 1959-) の『Domestic Landscapes ‐家庭の風景-』プロジェクトを見ているとその思いが強くなる。