2012/03/20

ダイアン・アーバスの神経 3/3

(承前)
1970年にダイアンを撮影した写真が残っている。彼女は自らの作品を手に、椅子に腰かけ、なにか問いかけられたのかその顔を横に向けている。47歳の彼女は髪を短くカットし、ボーイッシュではあるが、その表情からは年齢以上の疲れさえ感じられる。

2012/03/15

ダイアン・アーバスの神経 2/3

(承前)
ポートレイトに求められるのは、被写体との距離感覚であり、ダイアン・アーバスの場合にはそれがじつに微妙だ。正面から、ずんずんと迫っていくように見えて、しかし、ほんとうのところは一定の距離を保ち、冷たく対象を見据えている。その距離感は、アーバスに影響を受けたという牛腸茂雄 (Shigeo Gocho, 1946-83) が、おそらくは生得的にか、もしくは胸椎カリエスのために負った身体的ハンディキャップゆえにもちえた感覚にかなり近いものがある。

2012/03/10

ダイアン・アーバスの神経 1/3

港に近い小さな、薄暗いバーには、25年近く前に死んだジョプリン(Janis Joplin, 1943-70) の歌う『summertime』がかかっていて、壁にはいくつかのポートレイト写真が飾られていた。もう20年以上前のことだ。写真に目をやると、それらはダイアン・アーバス (Diane Arbus, 1923-71) が撮ったフリークスで、だれもがしっかりとレンズに目を向けてフレームのなかに収まっていた。かなりの痛々しさを感じさせながら。

2012/03/01

奈良原一高の理知

奈良原一高(Narahara Ikko, 1931-)は早稲田大学大学院の院生時代に、個展『人間の土地』でデビューした。時代によって技法とテーマは変わるものの、どこか無国籍的な気配がある。時代や社会から隔絶された空間が作品のなかに切り取られていて、それがきわめて理知的な印象をあたえるからかもしれない。まるでキリコの絵でも見ているような。日本的な湿っぽい感情の介在をはねつけたその主知的な写真表現は、いまみても新鮮味がある。