2012/01/15

深瀬昌久の凄み


私小説には、その視線が自己の内面探求に向かうものと、他者との関係に注がれるものがあるようだ。
写真も同じで、「私写真」と呼ばれるものには、この2つの視線のいずれか、もしくは両者の交錯が印象的だ。

2012/01/09

風景写真の変容 2/2 :デジタル・キッチン


1997年の『ランド・オブ・パラドックス』展に、小林のりお (Kobayashi Norio,1952-) は郊外住宅地を撮影した写真を出品した。1952年に秋田県大館市で生まれた小林は、高校時代に東京の小田急沿線百合ヶ丘に住み、変わり行く風景に興味をもったという。その後、東京歯科大に入学するが中退。東京綜合写真専門学校で写真を学び、92年出版の『FIRST LIGHT』で木村伊兵衛写真賞を受賞した。現在は東京西郊のあきる野市に住み、一貫して郊外の風景を撮り続けている。

2012/01/07

風景写真の変容 1/2 :90年代

写真展『ランド・オブ・パラドックス』が兵庫県の芦屋市立美術博物館で開かれたのは、1997年のことだった。雑賀雄二、畠山直哉、小林のりお、山根敏郎の4人の写真家が1984年から96年にかけて撮影した写真84点で構成された展覧会だ。
彼らがテーマとしたのは日本が抱える負の状況だ。
被写体となっているのは、人工的な都市空間や郊外住宅地、造成中の埋立地、開発によって原形をとどめることなく削られた山、あるいは廃鉱となり打ち捨てられた島などなど。そこでは、さまざまな空間を通して、人間の営みの空虚さが表現されていた。しかし、彼らが切り取る世界には、単純な怒りや挑戦的な姿勢があるわけではない。むしろ淡々と、美しさすらたたえながら傷つけられた空間が提示される。

2012/01/03

ニューカラーの距離


20世紀後半の人工的で空虚な風景を、大判カメラによって捉えた「ニューカラー」と呼ばれる一連の作家たちの作品がある。80年代以降の多様な写真表現に道を拓いたのだが、その写真技法よりも気になるものがある。それは、ニューカラーにおける対象との「距離」だ。

2012/01/02

ニュー・トポグラフィクスからの展開 2/2

(承前)
それから30年。
ニュー・トポグラフィクスを出発点としたさまざまな試みが、風景写真の世界で繰り広げられてきた。その渦中にあって興味深いのは、「場所」の捉え方が大きく変化していることではないだろうか。
もっとも顕著な現象としては、場所の履歴から逸脱した「場所」というものを、写真家たちが表現しはじめているということだ。歴史性と結びついた「場所」の概念が大きく揺さぶられているともいえる。

2012/01/01

ニュー・トポグラフィクスからの展開 1/2


ルイス・ボルツ (Lewis Baltz,1945-) の写真には、自然と人工物のせめぎあう姿が淡々と、まるで科学者のような冷徹さで写し撮られている。
1975年に発表された処女作『ニューインダストリアル・パークス』(New Industrial Parks)では、米カリフォルニア州の新興工業団地を撮影、その後も都市郊外やスキーリゾート開発などを撮影し、ひとつの頂点を極めてゆく。