2010/06/13

ピーター・ヒューゴ、静かなる暴走

南アフリカの写真家ピーター・ヒューゴ(Pieter Hugo)の作品が凄い。
脱色したような淡い色彩のなかで、なにげない路上の風景や家族の肖像、ポートレートが目に映る。その背景にはアフリカの血に染まった物語がうずたかく積もっている。それを説明されるまでもなく、静かな写真からそのただならぬものの気配が充分に伝わってくる。たぐいまれな才能だ。


1976年ケープタウンに生まれ、そこで育つ。この30年あまりのアフリカを直に呼吸してきた。作品には南アフリカのほか、ジンバブエと南アの国境の街ムシナ(MUSINA)やメッシナ(Messina)、ルワンダで起きた大量殺戮を取材。戦闘や暴力シーンを撮影するのではなく、日常の暮らしをカメラに収めながら、そこから溢れでようとするかのような歴史の凄惨さをすくいとっている。


男たちがまるで犬でも散歩させるように紐でつないでいるのは、口を縛ったハイエナだ。同じように連れ歩いているマントヒヒはどこか狂気じみている。写真集の序文を読めば、彼らが旅芸人であるとわかるが、それでもそこに潜む狂気が減じるわけではない。アルビノを撮った肖像は、その症状ゆえに殺害された人々を思い起こさせる。森のなかにたたずむ青年は、ただそこにいるだけでなぜか暴力の匂いを漂わせている。














植民地として長く西欧支配を受けたアフリカゆえに、西欧近代の文化に充分に訴えうる文化的背景を抱えながら、独自の歴史を歩んできたアフリカの姿を捉えた写真群だ。肌がひりひりするような戦慄と興奮を覚える。


※Pieter Hugoの写真サイト
http://photography-now.net/pieter_hugo/
http://www.pieterhugo.com/


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