2010/06/08

ヴォルカーの裸形

奇妙なヌード写真を撮る写真家がいる。クリストファー・ヴォルカー (Christopher Voelker)、彼はヌードを通して、人間という“場所”を撮っているのかもしれない。ここでいう場所とは、本来あるはずの姿とでもいうべきものだ。とりわけ女性の裸体というフォームによって、その姿を写し撮ろうとしている。裸体というより裸形という言葉のほうが、より写真のもつニュアンスに近いかもしれない。

本来あるべき姿と書いたが、写真を見るかぎりどこかしら人工的な装飾性がある。仮面をかぶっていたり、泥を塗られたり、割れたガラスに映しこまれたりして、ときに禍々しい印象すらある。それは愛人ウニカの緊縛写真を撮り続けたハンス・ベルメール(Hans Bellmer)を彷彿させたりもする。肉というきわめて人間的な生々しい存在を、淡々と、ときには殺伐とした物体として写し撮ること。ヴォルカーにとっては、その客観性のために泥が必要だったのかもしれない。ただし、ベルメールのような妖しい滅びはそこにない。むしろ原初的な生命エネルギーのようなものがある。

ヴォルカーは1961年米ロサンゼルスに生まれた。16歳のときモトクロス事故で脊髄を損傷し、以来下半身不随。それは関係がないと本人はいうかもしれないが、どこかで糸はつながっているだろう。その後フリーランスのスタジオ写真家として、大判カメラで作品を撮り続けている。肉体が本来あるべきはずの場所を追い求めるようにして。




  関連サイト: Christopher Voelker   artshoreベルメール




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